保育行政について

福祉文教委員会においては、「保育行政について」を特別調査事件と定め、これまで執行部との協議や行政視察、また、3名の参考人からの意見聴取や市内の保育関係者と意見交換等を行い、待機児童解消に向けた方策を探ってきた。

執行部においても保育士修学資金貸付金条例の制定や公立保育所における延長保育の実施などの施策を打ち出し、保育所等への入所児童数は増加しているものの、現在も待機児童の解消には至っていない。

約2年間にわたる調査を終了するに当たり、福祉文教委員会として、保育施策の充実に向け、以下のとおり提言する。

 

提言1 保育の受け皿の早期整備について(量の確保)
飯塚市の保育の受け皿整備の状況については、認可保育所・認定こども園あわせた定員総数が3,390人なのに対し、市内居住児童の利用人数は、今年度の4月は3,393人、2月は3,715人と認定総数が定員総数を上回っている状況である。その状況の中、各園の努力により、定員を上回る児童が入所できているものの、2月1日現在で、104名の待機児童が発生している。この状況を、一刻も早く脱却するために、地域型保育等を含めたあらゆる手段を講じて、充分な保育の受け皿整備を行うべきである。
提言2 教育・保育等の提供区域について
「子ども・子育て支援事業計画」では、保育所・認定こども園などの教育・保育等をはじめとした主要事業について、「市全域」を提供区域とし、量の見込みと確保の方策を定めている。その結果、どんなに距離が離れていても、受入可能な保育所があれば、市の「待機児童」の定義から外れてきた。しかし、飯塚市は1市4町が合併し面積が広く、現実的に遠方の保育所には通園できない状況である。そのため現在、策定作業が進められている「子ども・子育て支援事業計画」においては、 保育所・認定こども園などの教育・保育等をはじめとした主要事業について、提供区域を「市全域」ではなく、いくつかの地域に分割し、実態に則したものにすべきである。
提言3 保育士の待遇改善について
市は独自に行っているのは、修学資金・生活資金の貸付、就職支度金の支給など、対象は一部の保育士に限られている。しかし、他の自治体では、家賃補助や給料の上乗せ、研修時の代替職員の人件費補助など多岐にわたっている。 保育士の待遇改善については、一義的には運営主体と国が行うべきものであるが、保育士不足と待遇の現状等を考慮すると、市町村が独自に待遇改善を行う必要性を強く感じざるを得ない。 よって、保育士の待遇改善については、その専門性を考慮し、他職種等との比較においても、均衡の取れた待遇となるよう対策を講じるべきである。
提言4 保育の質の確保・向上について
市は、公立保育所・認定こども園において、研修への参加や休暇の取得ができるよう、国の基準を上回る職員の配置を行い、保育の質の確保・向上に努めている。その姿勢は歓迎すべきものであるが、他方で私立保育所に対しては、同様の基準を設けておらず、各園の経営努力に任せている。参考人からは、「国基準はあくまで最低基準であって望ましい基準ではない。」という指摘があったが、私立保育所との意見交換の際にも同様の意見が出された。子どもの安全と健やかな成長のためには、専門性の高まり等に対応した職員配置、保育士の能力向上のための研修、経験に応じてステップアップできる職場環境が必要であるため、保育の質の確保・向上にむけた取り組みを市が主導して行うべきである。
提言5 多様化する保育ニーズへの対応について
近年の保育需要の飛躍的増大と2019年10月から開始される幼児教育・保育の無償 化に伴い、今後、さらに保育ニーズの多様化・深化が進んでいくと考えられる。この保育ニーズへの対応を早期に進めることが、子育て家庭の負担軽減に繋がり、子育てしやすい飯塚市の実現に寄与すると思われる。よって、休日保育、早朝・夜間保育、病児・病後児保育といった多様化する保育ニーズに対応できる保育の仕組みづくりに積極的に取り組むべきである。

 

この5つの提言を市はどのように考えているのか?

8月5日、11月14日開催の委員会で私は質問を行いました。

Q1.  提言1では、本市にある認可保育所・認定こども園だけでは受け皿となる施設が足りないために待機児童が発生している。そこで市内にある企業主導型保育所などを活用した保育の受け皿確保が私は必要であると考えるが、本市の考えは。

A1. 現在、横田保育所、幸袋こども園の2園の施設整備を行っている。今年度中に終わる予定であり、定員をそれぞれ20名ずつ増員し、合計40名増員する。また認定こども園については、桜ケ丘幼稚園が施設整備の申請書を出していて、その内示後に工事契約、着工となる。また新設保育所設置にむけ実施要領等を協議している段階である。

つまり、令和1年度、保育の受け皿は、増加しない。2園の施設整備が終わる来年度、40名増加する。桜ケ丘幼稚園及び新設保育所による保育の受け皿確保(両施設合計で160名増の計画)は早くとも2年後となります。

121名(令和1年11月時点)の待機児童に対し、40名の増だけでは十分とは言えません。

 

Q2. これから2年間、保育の受け皿の確保はどうするのか。

A2.  企業主導型の保育施設が市内に 現在9施設、9月に1施設完成予定であり、 合計10施設となる。企業主導型保育施設も含めて、保育の受け皿確保に努めていきたい。

市は保護者に対し、企業主導型保育施設の情報提供を行うが、企業主導型保育施設は市が関与することができないので、認可保育所と同等の情報提供ができないとの答弁でした。
この答弁は無責任すぎると感じています。企業主導型保育施設を含め保育の受け皿確保を行うのであれば、認可保育所と同等の情報提供ができなければ利用者は安心して保育施設に児童を預けることができません。
私は、企業主導型保育施設も認可保育所と同等の情報提供ができると考えています。もっと企業主導型保育施設関係者との協力体制が必要だと考えます。

11月の委員会に向け再度資料を読み返しました。そこで認可保育所2園が利用定員削減の申請を行い、平成31年3月に認められたことが判明しました。
2園合計で40名の削減です。

 

Q3.  現在、本市は待機児童を解消しようとしている中で、なぜ2園40名の利用定員削減を承諾したのか。

A3.  利用定員の変更を行う場合、園を運営する社会福祉法人から市へ意見書を求められ、その意見書と申請書類をあわせて社会福祉法人が県の嘉穂・鞍手保健環境事務所に提出する。

この2園を運営する社会福祉法人から昨年12月に利用定員変更の申請があり、本市としては認められないという話をし、待機児童が発生している状況では定員減は認められない旨の意見書を社会福祉法人へ渡した。その意見書を社会福祉法人が嘉穂・鞍手保健環境事務所に提出し、3月になり定員減が認められた。

その後、本市としては認めていないことを県に確認したが、申請書が出た以上、県は受理し利用定員減を認めるという回答である。本市は、変更について承諾はしていなかった。

以上のような答弁でした。
県は利用定員変更の届け出が提出された以上は受理せざるを得ない。ということは市と昨年12月にこの2園を運営する社会福祉法人が、利用定員削減という定員変更について意思疎通を図り、市は適切な指導を行うべきではなかったのか。また利用定員削減の原因を解消する適切な施策を考えるべきではなかったのか。
市は、県に市町村の意見を尊重してもらいたいという要望を行うとの答弁をしました。次回の委員会で県の考えがどうだったのか質問したいと思っています。
また、この2園のうち1園は市が移譲した保育施設です。その後、施設改修に補助金を活用しています。しかし、当初の計画どおりいかなかったことにより利用定員減の申請を行ったわけです。
市の答弁によると、1番の理由は保育士不足が原因だと。市は、2園に対し1人でも多く受け入れて欲しいとのお願をしたと答弁しました。
認可保育所は市が関与できるわけです。答弁のようなお願いではなく、上記提言2、3及び4の施策が必要であったことは明らかです。
この民間移譲は失敗だと私は考えています。
市が当初、待機児童解消策として計画していた受け皿確保施策の受入れ数が、200名から160名に減ってしまったのですから。
今回は提言1についてこれまでの経緯と報告をさせていただきました。